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トイレ
古希を過ぎて四年も経つと、古い機械さながら、体のあちこちにガタが来て、外国旅行に出た時は色々と気を使う。特に留意して注意すべき点、と言うか、悩ましいものの一つがトイレである。欧州の街ではどこであれ、ご存知のように、日本の様に簡単にトイレは利用できない。駅に行けばある等と期待してはいけない。あったとしても有料で、1.0 or 0.5 Euroとか、払わされる。
 宿を出て、勇んで歩み出したのはいいものの、下着に装着すべき尿パッドを忘れたりして、
或は気付いても「えぃ、何とかなる、俺は老いても男だ」等と自分ながら意味の解らない屁理屈で息巻いて、すぐ後悔する目にあう。
 Alexander Platzをうろついて、土産物屋で葉書きを買ったりしているうち、いよいよ、トイレの呼び声が高く、身内に響いて来た。OKTOBERFESTとか、横長の大きな看板を横目に見て興味を惹かれてものんびり見物してなどいられない。焦る気持ちを抑えて、この辺りならと見当をつけ、DECATHELONとかいう名の付いた建物に入ると、Volltreffer! やったぁ、大当たり! 軽食喫茶という感じの店のある通路の、その奥の方に、あった。
 0.5 Euroを払って、用足しとなった。出入り口近くにスラリとして背の高い老婦人がいて、彼女がこの場の面倒をみていた。感じの良い婦人で、単なるurinieren, オシッコなのか、それともKabineを使うのかと聞いてきた。小か大か、いずれなるか?
 彼女と少し話をした。Ich lernte die deutche Sprache als ich jung war. Aber,,,というだけで「Sie sprechen gut!」とかお世辞を言ってくれて、無論、悪い気はせず、「ありがとう」と頭を下げてお辞儀をすると、彼女は「あなたたちってそうして」何とかかんとか、とボクの仕草にほほ笑んで、見えた歯の一部が欠けていた。彼女が幾つになるのか、分からない。ボクより若いのかもしれない。いずれにせよ、余り裕福とは思えず、だから歯も少し欠けたままで、こうしてトイレで働いているのだろう。それでも彼女はどこかおおらかで、なにか豊かな感じを漂わせていて、少し話し合うだけで、もう嬉しかった。彼女に幸いあれ。

Das Evangelim nach Matthäus

5-3

Selig sind, die da geistlich arm sind; denn ihrer ist das Himmelreich.